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過去に紹介された書籍


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あおい目のこねこ

エゴン・マチーセン 作・絵

せた ていじ 訳

出版社:福音館書店


この本を補習校で見つけた時は、思わず歓声をあげてしまいました。

その昔、大学時代にこの本を見かけた時、迷うことなくレジに持って行ったものです。今その

本がどこにあるのかわかりませんが、何十年も経て、また巡り会うことができました。

あおい目のこねこ、シャム猫なのでしょうね。でも、子猫から想像される愛くるしさ、ただた

だ可愛い、、という子猫ではありません。独立独歩の、ほんのわずかな描写で、こよなく生きて

いる子猫がそこに描かれています。

作者は、デンマークの絵本作家で、優れた壁画も残しているそうです。

また、翻訳の瀬田貞二さんは、海外の数々の児童文学を日本に紹介なさった、本当に素敵な言

葉を綴る方です。



おおかみと七ひきのこやぎ

グリム 作

フェリクス・ホフマン 絵

せた ていじ 訳

出版社:福音館書店

皆さんの中には「ちびくろさんぼ」という絵本をご存知の方はいらっしゃいますか?サンボくんが虎に追いかけられて木に登り、その木の周りを虎たちがグルグル、ぐるぐる走り回ってスピードが増して、ついには溶けたバターになってしまうという私の記憶の中では楽しいお話でしたが、そのほかの部分が民族蔑視につながると出版禁止になってしまいました。

10人のインディアンという歌があります。これも歴史的悪意のあるものとして、インディアンをパンプキンに変えて歌ったりしています。

こういう成文化されない規制はどんどん広がっていくでしょうし、私たちもわきまえなければならないことが増えていきます。単純に勧善懲悪の物語はいつまで存在できるのでしょう。

「赤ずきんちゃん」と「おおかみと七ひきの子ヤギ」どちらも悪い狼がお腹を切られて中から犠牲者が生きて助けられます。狼は死んでしまうけれど、、、狼はどうすればよかったと言うのでしょう。

この時代、子供たちの知識、常識もどんどん変化し、複雑化しています。新しい子供の話もたくさん出てきました。狼さんが悪者のお話はいつまでみんなに読まれるのでしょうね、、、。



しろいうさぎとくろいうさぎ

ガース・ウイリアムズ 文・絵

まつおかきょうこ 訳

出版社:福音館書店


子供達の情操教育ってなんでしょう。自然に触れる、絵を描く、音楽を聴く、色々な話をする

。なぜか、情緒という言葉をイタリア語に訳そうとすると、なかなか難しいですね。liricitàと辞書には出ていますが、イタリア人に言っても「なにそれ?」と返ってきます。

この本の裏には「読んであげるなら4才から。じぶんで読むなら小学校中級向き」とあります。

全て平仮名の絵本です。大人だったら単純な展開で、私などは「さっさとしろヨォ」なんて情緒もへったくれも(失礼!)なく読んだのですが、これは子供達に考えさせる、振り返らせるにはとても良いお話かもしれないと思い始めました。

仲良しのしろいうさぎとくろいうさぎが楽しく遊んでいます。ところが、しばらくするとくろ

いうさぎが悲しそうな顔をします。聴くと「僕、ちょっと考えていたんだ」なにを考えていたのでしょう。楽しい楽しい遊びの中で、くろいうさぎは何度も中断して悲しそうな顔をするのです。

これを読む子供達もしろいうさぎと同じように、「どうして?」「なにが悲しいの?」と、次

第に気になることでしょう。それも一つの大切な情操教育だと思いました。

どうぞ、くろいうさぎが心から笑えることを確かめてください。


てぶくろ

ウクライナ民話

エウゲーニー・M・ラチョフ 絵

うちだ りさこ 訳

出版社:福音館書店


ウクライナ民話に、ラチョフさんという人が絵をつけた絵本です。

お話は、おじいさんが手袋を一つ落としてしまったことから始まります。北の寒い寒い国です。その手袋は中はもこもこ、外側は裏革のとても暖かそうなもの。

落ちている手袋の中に、動物たちが宿を借りにきます。

ネズミが来て、カエル(冬眠しないのか!)が来て、次から次へと、だんだん大きな動物がやってきます。しまいには、もう無理だよ、、いやもっと詰めてよ、隅っこに行ってよ、、と、なんとクマさんまで入ってきました。そして、どの動物さんも、楽しい二つ名を持っているのです。

おじいさんの手袋はどれだけ大きいのでしょうねぇ。

どのページの手袋も本当に暖かそうです。ついつい私も入りたいと思ってしまいます。

流石に、猪やクマさんなんかが入ると、多少ほつれかけたり、息苦しいのか窓が開いたりしています。

やがて、手袋を落としたことに気がついたおじいさんが、愛犬と一緒に戻ってくると、そこには元どおりの手袋が落ちていました。

あんなにたくさんの動物が入ることのできたなぞ。

ほつれや窓は、みんなが犬の鳴き声に逃げて行ったときに、一緒に逃げてしまったのかしら。


夏の庭

The Friends

湯本 香樹実   著者

出版社:徳間書店

この本を補習校から借りて読んだ時、ああこれはみんなにも読んでほしい話だと思いました。小学六年生の三人の男の子たちの、夏休みの、一生心に残るであろうエピソードなのです。読んだどの人の心にも、何かが残るはずです。

紹介文を書こうとした時、手元に本がなかったので、各国で訳されていることからイタリア語で探してみました。ありました!「Amici」という題です。早速取り寄せて読み始めましたが、最初の数ページで迷いだしました。

日本の小学校が六年制であることはいいとして、子供たちの塾やクラブ活動、私立校の受験準備、公営プール、火葬、そういった日本の文化、習慣、なんと呼べばいいのでしょう、常識とも言える前提は、外国ではどこまで理解できるのでしょうか。 また、補習校の生徒の皆さんは、その「前提」を身近に体験できているのでしょうか。紹介から少しずれてしまいました。 祖母のお葬式で遺体を間近にし、火葬場に居合わせ、人の死というものに強烈な印象を受け、それに向き合うために何かをしようとする三人。それが「誰かの死を見届けよう」なんて、発想がすごい。

たまたまその対象となった、一人の孤独な老人と関わることで、生きてきた、生きている、人と関わる、身を処すことを知り、さらに戦争のおぞましいエピソードを心の何処かにとどめつつも、哀しいエピソードを解決しようと走り回る。

ごくごく普通の、個性豊かな三人が過ごしたこの夏を、どうか皆さんも追体験してみてください。


だるまちゃんとてんぐちゃん

加古 里子 さく/ え

出版社:福音書店

「だるま」と「てんぐ」という二大伝説キャラクターが、可愛い子供として登場するこのお話。荒唐無稽のようで、じっくり考えさせられました。わがままなのか、親の愛情なのか、友情の形なのか、、そして、こういう帰結があるから、読書はやめられない。

だるまちゃんは、てんぐちゃんの持っているものと同じものを欲しがります。でも、てんぐちゃんに「それちょうだい」と言わずに、「僕も同じものが欲しい」と家に帰って大きいだるまどんに言うのです。

だるまどんは、よしよしとありったけのものを出してくれますが、だるまちゃんが思っていたものではありません。

でも見てください。本当にありとあらゆる種類のものを出してくるのです。私は、一つ一つ、これはなんだろう、何に使われているのだろう、、と考えるだけで楽しくなりました。

だるまちゃんは次々にてんぐちゃんと同じものを欲しがりますが、いつもだるまどんの出してくるものは(まぁ、なんてたくさんの種類を!)思っていたものとはちょっと違うのです。

そこで、だるまちゃんは、自分の力でなんとかそれらしいものを見つけ出します。そしてその度にてんぐちゃんは「素敵だね」と褒めてくれるのです。

最後にはだるまどんの大ヒットで、長い鼻が手に入り、その鼻でXXも捕まえて、二人は楽しく遊びましたとさ、、、

スーホの白い馬

大塚 勇三 再話 / 赤羽 末吉 画

出版社:福音書店

このお話は、小学二年生の教科書に載ったこともあり、読んだ人もたくさんいることでしょう。

 モンゴルという中国の北の草原の国、スーホ少年と白い馬の悲しくも心温まるお話です。少年の、馬を愛する気持ち、白馬の、主人を慕う気持ち、動物と人間という種を超えての友情を書き上げています。

 このお話は、モンゴルの馬頭琴という楽器が生まれた由来と紹介されていますが、なぜかモンゴルではあまり知られていない昔話だそうです。でも、馬頭琴がモンゴルで、日本の三味線のように国を代表する楽器であるのは確かです。

 馬頭琴とはどんなものかを探してみました。チェロの音に近いけれど、程よく混ざり物のある音色、たった二本の弦なのにその表現力の多彩なことに驚きました。さらにはホーミーという独特の歌い方。一人が一度に二つの音を歌い響かせるのです。

スーホも、草原の中で馬頭琴を弾きながら歌ったのかな、、。

モンゴルの風の響きをちょっと感じてみてください。